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2013年11月25日月曜日

人気ある中高一貫校の悩み

丁寧な指導が評価される首都圏の中高一貫の女子校にお伺いいたしました。
学校としては学校全体で長く使っていただいています。
お会いしたのは、今年から中学一年生で初めて論理エンジンを使って指導されているという先生がたでした。

進度としては中学3年間でOS3冊、という標準的なものでした。
使い方は学年裁量ということですが、英語に力を入れたカリキュラムですので
中々論理エンジンに時間を割けないということです。
そうした制約の中で、各人がそれぞれの工夫で使っているということです。

しかし、生徒の理解力に差がありますので、授業中に使えるクラスもあれば、
細かなところにこだわりすぎて先に進めない生徒もいる、という状況です。
こうした中で、現在文法を扱っているので、それに併せて論理エンジンで付属語を
扱っているところをピックアップして教えているということです。

このように生徒の理解力が多様なのですが、人気校ですのでクラスサイズを
小さくすることができず、一人ひとりの理解力を十分に把握した対応ができないことが
悩みということです。

一方で、進学実績を伸ばす必要もあります。
またAO入試や付属の大学へ進学にすることを踏まえ、高2で論文を書くことになっており、
そのための論理力をつけるために論理エンジンが導入されています。
こうしたプログラムにおいて、論理エンジンをどのように使っていくか、
ということが課題となっています。

一人ひとりの理解力を確認し、課題を発見するためにはクリアテストの活用が有効だと思います。
また、縦にレベル、横にステップを書いた表をつくり、自分でやったステップに○、解説を理解できたら◎、よくわからなければ△を生徒につけてもらい、回収するということも考えられます。

論理的に表現する訓練の一つとして、中学段階では論理エンジンの解答を巡って、グループで論議することも考えられます。


論理エンジンに対する要望として、全教室に電子黒板が入ったので、これに対応するテキストがないかという声をいただきました。
もし同様の要望があるようでしたら、ぜひ私たちにお伝えいただければと思います。

2013年11月18日月曜日

取り組み事例1

過去の研究会の資料を見ますと、取り組み、成果、課題には次のようなものがあるようです。
(平成18年7月3日より)

1.高校 共学

特進で取り入れる。長文が出てくると意欲低下。時間数が確保できずレベルを飛ばすと意欲がやや落ちる。国語が伸びたと自覚する生徒が多くでて、ベネッセの偏差値が10~15上昇。学力到達ゾーンでBが最も多くなり、Aが20%。


2.中高一貫 女子校

国語科で推進、中3と高1で毎週土曜講座90分。自学自習。生徒が判断してクリアテストを受けに来る。クリアできない生徒に個別指導。授業の中で論理エンジンの用語を使った説明ができるようになる。


3. 高校 男子校

自主学習サークルとして希望を募り放課後、週一回。文章を意識して読むようになったという声や線を引くようになった生徒がでてきた。今年からは1年生全員のオリエンテーション合宿でプロローグを実施し、週1で授業。1時間1レベルでクリアテスト2種を使用。残りのクリアテストを定期試験で使用。他教科が苦手な生徒も食いついてきた。予習をこなせるかが課題。

4. 高校 共学

高3の特進でセンター対策に3か月実施。自習形式。4,5名が飛躍的に伸びた。昨年は担任が担当し進度を決定し自習形式でやってていたが、強制力のある数学や英語の課題が優先され、うまくいかなかった。国語の学習の仕方がわかるようになったという自信を持つ生徒が出てきたが、高1では成績に反映されない生徒もいるのが課題。演習クラスの方が使いやすい。

5. 中高一貫 女子校

授業の始め10~20分に3ステップずつ問題を解き、解説する。中3はクイズ感覚で楽しむ。国語に苦手意識のある生徒や理系の生徒の方が意欲的に取り組む。国語が得意と自分で思っている生徒、感覚でなんとなく正答を出す生徒ほど違和感がある。



2013年11月15日金曜日

中学校での成果と課題

2005年7月と、論理エンジンを本格的に紹介し始めたことの交流会での記録です。
レベルは現在の構成と異なります。

【生徒の取り組み状況について】
①昨年度の取り組み
  中学1年生:レベル1~17
  中学2年生:レベル1~20,レベル41~49 
  中学3年生:レベル1~38 

 3年生:「レベル20~レベル60」
 成績不振者,特に記述問題を見ただけであきらめる生徒をなくしていきたい。そのため,図式化・抜き出し・答え方の形式などは,印のつけ方・答えの作り方を授業で強調しながら,しっかりと説明していく。これは成績上位層にとっても,効果がある。減点を少なくすることができる。また、「フィーリング」ではなく正しい論理を自分のものにできる内容である。レベル40までは,スピードよりも確実な考え方の定着を重視している。

15分ほど時間を与え,その場で解かせている。場合によっては設問を指示している。
机間巡視をしながら,ミスの特徴,スピード,意欲,理解度をチェックする。
解説は生徒を中心に担当している。②を参考に生徒を選抜している。
質問に対応する。
残りの問題を宿題とする(ほとんどの場合,授業とあわせてレベルが1進む程度)。生徒の状態を見て,演習を進める場合もある。現在は,週に1,2時間程度扱っており,内容によってはまとめて自学の宿題としている。


【効果】
 3年生 
集中力に欠ける生徒が,自分の手で書き込むことの充実感を感じている。
レベルが進んでいることが自分でもわかるので達成感を感じている。
文章の図式化に興味を持って取り組んでいる。
対比関係など,構造をつかもうとすることで,接続詞・副詞・助詞などの働きに着目できるようになってきた。
記述問題の基本は,抜き出した後に調整するとうまくいくということを認識するようになった。
国語の授業においても,解説や板書が効率的に進みやすくなった。

【課題】
自宅において自力で解いてきてもらって,学校で解答と解説を行っている。問題を丁寧に読みじっくり考えて解いてほしいのだが,生徒によって取り組みに差がある。
毎日の授業で扱っているが,教科書との兼ね合いもあり,十分な時間が確保できない。
授業ではそれなりに取り組んでも,宿題だとなかなかやろうとしない生徒がいる。回収    しチェックしても,理解度がみえにくいことがある。
→理解度,集中力,スピードなどの自己チェックシートを作ろうと考えている。
意欲もスピードもある生徒は,ある程度独走させてよいのか。今のところは足並みを揃えている。

学力中位の生徒に対して

2006年ですので、今から6年も前になりますが、お話を伺った先生は今なお、論理エンジンを含め多方面にわたり活躍されています。当時は、中国地方の中堅高校の特進を担当されていました。

【取り組み】
センターのためにはレベル70以降(OS5に相当)をする前に準備が必要。
なんとなく解かないように、毎回なぜこれをするのかという意味や目標を説明する。
偏差値50を切る生徒には特にそうした説明が必要。
1週間で1レベルで宿題を出し、授業でその範囲の確認テストと解説をする。
生徒のテキストをチェックして、できていないところは付箋をして返却する。
1年からの教え方ですべて決まる。
1年の段階では「やるべきこと」をやっているかどうかを徹底してチェックする。
予習の仕方、授業でおさえるべきポイント、復習の仕方。
一緒に行う先生と目標と情報を共有することが成果を挙げた要因。

【進度が異なる場合】
全員同じ進度で進んでいる。
2年から現代文の成績でクラスを分けた。
一方のクラスではクリアテストを2題、どんどん進ませる。
このクラスのトップ層は偏差値75くらいまで行く。
もう一方は説明を厚くする。
このクラスの下の層は偏差値45くらい。底上げをする。

【生徒のモチベーションを維持させるために】
手を抜けない状況にする。
テキストに付箋をつけて返却するのもその一つ。
間違えたのになぜ間違えないかがチェックされていなければ付箋をつける。
生徒は付箋がついたままの状態を気にする。
こうした取り組みを続けると、生徒は解くときにチェックするようになる。

【生徒の関心を高めるために】
論理エンジンノートを作らせている。
結論に至るまでの展開を書かせる。筆者の論点を抑える。
今の2年は1年の時から実践しているが、一年間でできるようになる。
進研模試の文章を使って本文構成を図式化する。
これがセンターを解く基礎になる。
ノートの見開きの右に自分の答え、左に授業での板書を書き、違いを見比べる。
このとき、問いとどのように関わっているかも説明する。
もう一度解かせ、要約させる。
すべての問題についてするわけではないが、やると力がつく。

【そのほかの工夫】
文法をしっかりすると古典をしやすい。
公立の受け皿として入学する生徒はこの力が欠けている。

【成果】
進研模試
偏差値 1年7月48.9→11月51.4→1月53.7→2年7月55.8
偏差値50以上の人数 1年7月23人→11月35人→1月36人→2年7月50人

宮台真司さんとの対談

今から7年も前になりますが、振り返ってみると面白い内容です。

「論理」が必要というと、「頭でっかちの人間をつくるだけで、感情や思いやりはいいのか」という反論にどう対応しますか、という話が途中でててきます。

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2006-10-01
宮台真司オフィシャルブログ
久しぶりに教育問題について対談しました。お相手は現代文のカリスマ講師・出口汪さん!
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=408
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それから、数年後、どのような話になっているのかをみてみましょう。

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2012年5月17日
出口汪オフィシャルブログ 対談・真剣勝負 Vol.8
http://deguchi-hiroshi.com/taidan/taidan8/taidan8_1.html
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やはり3.11が私たちにとって、過去と未来を考えるターニングポイントであったことが確認できます。
また、ツイッターを始めとするコミュニケーションツールの出現により、
私たちが何を考え、どのように伝えるかということも大きく変わってきたように思います。
答えの出ない社会の問題に対峙するためにも、論理力を身につける必要性が高まっているように思います。


ドラゴン桜 5巻

テレビドラマにもなった「ドラゴン桜」の5巻に、出口先生が登場したこともありました。
そこでは次のようなことが書かれています。

「論理と言うと、こむずかしいイメージがあるかもしれないが、逆である。論理がなければ、物事は混乱していて、理解するのが大変だ。」
「論理とは、筋道のことである。筋道を立てて考える力がついていると、一を聞いただけで、十のことが推測できて分かるようになる。」

久しぶりに読み返してみたいですね。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E6%A1%9C-5-%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0KC-%E4%B8%89%E7%94%B0-%E7%B4%80%E6%88%BF/dp/4063289869/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1384498821&sr=8-1&keywords=%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E6%A1%9C5

女子校での取り組み

関東圏の女子校での取り組みです。推進者の先生は、初期の論理エンジンの不備な点を親身になって教えていただき、共同開発者ともいえる方です。これも平成18年と古い話ですが、取り組みについて次のように話されました。

【使い方】
中1から高3までほぼ全員。
中1、中2は朝の10分間、中3からは国語の時間を使う。
レベル30までは担任の先生が担当。レベル31以降は国語の先生が担当。
生徒全員が同じ進度で進む。
学校ではクリアテストを中心とし、宿題でテキスト部分をやってくる。
教員は毎週1回、テキストをしているかどうかを確認する。
定期的に確認していないクラスはクリアテストの合格率もよくなかった。
レベル70(OS5に相当)までを高3夏に終えることが目標。
すべてを細かく教えるのでなく、ポイントを取捨選択し、絞り込むことができるかが大切。
入試問題などの演習を早い段階から取り入れる。
答えがあったかどうかだけを意識することがないよう、授業中に開設する。
クリアテスト不合格者は放課後に残して補習。
生徒は残りたくないので、授業中に懸命にポイントを理解しようとする。
クリアテストは2回繰り返せば不合格者がいても先に進むようにしている。

【学校全体で取り組む際のポイント】
教務で進捗確認を定期的に行う。
担当教員の事前学習を徹底し、論理エンジンがどのような構成になっているかを理解する。
そうすれば生徒が躓いたときに、教員が判断できる。
スパイラル方式なので先に進んでもよいのに、何度も同じ個所をさせて生徒のモチベーションを下げることもあるため。
また、年度が始まる前に教員がシラバスを作成する。

【生徒の反応】
少し国語ができる生徒は嫌がる。自分のやり方と異なる方法が面倒という理由。
本当にできる生徒は真面目にやる。
伸びしろがあるのに自分ではできると思っている生徒が一番なじむのに時間がかかる。

【偏差値推移】
          4月 → 7月
中3
60台 2人→4人
50台 16人→25人
40台 29人→26人
30台 14人→6人

中2
60台 1人→7人
50台 13人→18人
40台 27人→18人
30台 7人→5人

意欲的な生徒と模試結果の相関関係

平成18年に関西圏のある高校の特進できいた話なので、今とは論理エンジンの構成も異なっているのですが、一番伸びた生徒は、一行一行丁寧に解くタイプだったそうです
(進研1年7月45.9→進研2年7月73.6 +27.7)。

別の国語の苦手な生徒は、論理エンジンはまじめにやった結果現代文の力が安定してきたということでした
(進研1年7月→進研3年6月
正答率 生徒A:評論36.7%→64% 小説25%→70%、
生徒B:評論20%→50% 小説35%→80%
生徒C:評論66.7%→76% 小説65%→100%)。

【進研模試偏差値推移 2005】
                 高2 7月→1月         高3 7月→1月
偏差値60台 0人→3人               1人→5人
偏差値50台 4人→8人              10人→8人
偏差値40台 12人→8人             7人→11人
偏差値30台 13人→10人           9人→4人

今とは構成が異なりますので参考程度ですが、基本的な取り組みは次のようなものでした。
以前はレベル1から100まであり、レベル50までが現在のOS1-5、レベル51以降がPS1-5に相当しています。ただし、誌上講義がない旧版よりもさらに分量があり、難度も高いものでした。
その後、内容の精査などをし、現在の版となっています。

【進め方】
1年 夏休み前 Lv.8、Lv.51 夏休み宿題 Lv.15まで
 「論理とは」「主語と述語」「言葉のつながり」「一文の構造」「単語と文節」「品詞」「助詞」「助動詞」
 「文の要点」などをやり、応用問題(Lv.51-)をする。
 「イコールの関係」「筆者の主張と理由」「活用形」「指示語」は宿題に出し、夏休み後に復習。

2年 夏休み前 Lv.45、Lv.62 夏休み宿題 Lv.48まで
 夏休み前までに基礎的な部分を終わらせる。「接続語」「内容整理「筆者の主張と要約」「小説問題の基礎」「論理的読解の原理」「選択肢の選び方」「根拠の確認」「出題者の指示」「抜き出し条件のチェック」「記述式問題の基礎」「空所問題の解法」「整序問題」「欠落分挿入問題」「随想問題の解法」「文章の構造」「客観的分析」「論理的読解法」をやり、応用問題(Lv.62-)をする。

3年 夏休み前 Lv.68 夏休み宿題 Lv.90
 応用問題(Lv.68-)をしながら、これまでやってきたことを確認。分量が多く、こなせない。夏休み以降は論理エンジンではなく、大学受験対策に。

【授業】
7限目に週1コマ、50分授業。レベルの最初は説明するが、あとは宿題をやってこさせ、クリア問題で確認。宿題としていたテキストの箇所を点検しつつ、クリア問題を採点。提出や授業内にクリアできなかったら定期テストから減点(最大18点)。
重要な問題は時間をかけるが、機械的にできるところは素早く済ます。
上のレベルに行くまでは練習が比較的少ないので、小論文や作文指導など文章を書く作業も並行して行う。

【宿題】
最初は2レベルづつ。文章を読むようになってからは1レベルづつ。長期休暇で目標レベルをもとに調整。

【進度が異なる場合の対応】
最低進度を決めているので、遅れても1週間。

【進度が遅い、理解が進まない生徒への対応】
一定の間隔で、テキストをやるまで帰さない日を作っている。
遅れている生徒ほど、正答までのステップを飛ばして答えだけ書いてくる。

【生徒のモチベーションを維持する上で注意していること】
どこまで進んだかを記録する一覧表を作成。他の生徒が自分よりも進んでいるのを見ると燃える。

【生徒の関心を高めるためにしていること】
実は自分では成果がでているか不安になるときがある。
しかし、生徒の兄がテキストを見て、「それできていいなぁ」とうらやましがったり、
公立高校の教師をしている親御さんが、「自分の学校でもやってみたい」という声を聞くので、
生徒に「信じてやろう」と言っている。

論理エンジンの起源

もともとは、ある女子高で、生徒と教師、生徒と家族がよりよいコミュニケーションできるように、という理念で導入されていました。
私たちヒューマン・リンクも、学校改善の根本は授業により生徒が伸びることだと考えていました。
授業とは、生徒が教科書や教師、他の生徒や自分自身と対話しつつ、物事を理解したり、新たな知識や発見を得る場所だと思います。
論理エンジンにより生徒が筋道を立てて考え、表現する力を養うことで、生徒が伸びる学校づくりを支援できるのではないか、と考えたことがもともとのきっかけでした。

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2005年3月10日
読み解く力(8) 「ムカつく」も論理で説明 :
教育ルネサンス : 教育 : YOMIURI ON-LINE (読売新聞)

「論理エンジン」に挑む常盤木学園高校の生徒たち
論理力向上を目指して、予備校が開発した教材の活用が広がっている。
仙台市にある常盤木学園高校の竹内もゆる教諭(43)は、年度の初めに決まって生徒たちに問いかけることにしている。

「皆さん、ほしいものがありますか?」
「あります」という生徒たに

「両親にお願いしても駄目だったら、どうしますか?」と畳みかける。

生徒たちが一瞬、考え込むと、すかさず授業の狙いを示す。
「どうしてもほしい場合は、両親を説得しなければなりません。
筋道立てて、言葉できちんと説得できる力が必要です。
この教材を使って鍛えていきましょう。」

教材名は「論理エンジン」。
東京の予備校で国語の講師を担当する出口汪(ひろし)さん(49)が受験生のために編み出した。
常盤木学園高校では、2002年度から、週に4コマの現代文の授業のうち1コマは、この教材を中心に進められる。

学ぶのは「言葉の規則」。
基本に立ち返り、「主語―述語」の関係を意識することから始める。
「修飾―被修飾」のつながり具合を確認し、さらに「文章と文章」の関係をつかむ。
最終的には、論文の読み方を身につける。

B5判で130ページ程度の問題集が計10冊あり、初級段階では「主語と述語を抜き出す」「修飾と被修飾の関係を示す」といった設問が続く。

その後は、中学高校の入試問題、大学入試問題と進み、最後は法科大学院の入試問題などにも挑む。高校などで使う場合、利用料は生徒一人あたり年間9,600円だ。

開発者の出口さんによると、希望者に限る高校も含めると、活用しているのは私立高校を中心に今年度は約60校を数えるという。公立高校でも、福岡県立久留米高校が2年生を対象に今年度から授業の教材として利用し始め、来年度は全学年で活用する予定だ。

同校国語科の石井倫子(みちこ)教諭(49)は「論理性を系統立てて身に着けさせる教材が今までなかった。教育の専門誌で見て『これだ』と思った」と話す。
ほぼ全員が進学希望の久留米高校に対して、常盤木学園高校の大学進学率はそう高くない。
「論理エンジン」の活用も、受験対策というよりも、国語力の育成がテーマだ。

「役立つかどうかが大切」と竹内教諭は語り、「『だるい』『ムカつく』といった具合に感情のままの言葉しか使えない生徒に、なぜ、どのぐらい『ムカつく』のかを説明できる力をつけさせたい」。
予備校の教材を授業で使うことに抵抗感はないという。
「文章の要点やキーワードを意識するようになった」というのが2年生の渡辺望帆(みほ)さん(17)の感想だ。

高校での活用が広がることについて出口さんは「文章の規則に従い、誰にでも分かる言葉で考えを伝える訓練を学校はやってこなかった。教科や学年の壁を越えて、子どもたちに論理性を身につけさせるべきだ」と話している。

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当初に比べ、全国の私立中高の1割以上に導入され、メディアでも取り上げられるようになりましたが、ご紹介を始めて10年が経とうとしていますので、改めて、その起源を確認しておこうと思いました。

2007年3月11日付 産経新聞朝刊
http://www.ronri.jp/contents/other/media/sankei.pdf

2007年5月21日 アエラ
http://www.ronri.jp/contents/other/media/aera.pdf


(出口先生の紹介記事)
2010年7月22日 『朝日新聞』 
佐藤優  「読むぞ!ホップステップジャンプ 論理的に説明できる力」
http://www.deguchi-hiroshi.com/media/asahisinbun7.22.pdf#zoom=100

2010年7月31日号 『週刊 東洋経済』 
[連載]  ~知の技法 出世の技法~ 
佐藤優  「知識や情報の活用に大切な論理的思考」
http://www.deguchi-hiroshi.com/media/toyokeizai7.31.pdf

2012年6月9日(土) 「世界一受けたい授業SP」(日本テレビ系列)
http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/120609/01.html


そのほか、メディア掲載情報一覧
http://www.deguchi-hiroshi.com/media.html
http://www.ronri.jp/contents/other/media.html

2013年11月14日木曜日

前年度の担当者がシラバスをつくる

中部地方の論理エンジンを導入いただいている中高一貫校にお話しを伺いに行ってきました。中学校は開校されてまだ10年経っていないというフレッシュな学校です。東大を含む多くの国公立大学の合格実績に加え、充実したシラバス、マイスタディプラン、道徳と総合学習を包括した全人教育など、独自の学習システムを作っている学校です。

その中学校で論理エンジンを導入されています。興味深いのが、中学一年生を教えている先生が卒業生で、高校の時に旧版の論理エンジンをやったことがある、というお話でした。直接その先生にお話しを伺う機会はなかったのですが、新しい版を見てスリムになったことに驚かれたそうです。

【ペース】
中1 OS1~OS2の途中 授業内で解きながらやり方を教える
中2 OS2~OS3 家庭学習を中心にした授業展開への移行 夏休みの前でレベル23 イコールの関係、ということでした。
中3 OS4~OS5 家庭学習中心

去年の中2の担当が授業内で解かせると個人差が大きくなるので、家庭学習中心の授業展開に切り替えた、ということです。
ちなみに、この学校ではシラバスは前年度の担当者がつくる、ということになっているそうです。なので、去年の中2を受け持った先生が現在の中2のシラバスを作っています。これはとても良い方法だと思います。

週に一コマ、と決めるのではなく、教科書の単元の切りが良いところで論理エンジンをする、という形です。
長期休暇は別の問題集や読書感想文をするということです。
中学校の先生は、その卒業生の先生を除けば一度は論理エンジンに関わっているということです。

【授業展開】
最初の5分はこれからするテーマや単元のまとまりについての説明をします。
宿題に出していたテキストは回収して、できていればハンコを押したり、できていないところに付箋をつけます。
次の15分は各人が問題を解きます。机間巡視をしながら声をかけたりします。
残りの30分で、ステップごとに答え合わせをします。このとき、なぜその答えになるのか、という発問を生徒にします。
中学2年生ですと恥ずかしがって答えない生徒もいますし、こちらから最初にある程度解説してから答えさせないといけない生徒もいます。

解説をきちんと読み込んでいる生徒は少ないため、ここでしっかりと考え方を身に着けるようにします。
「この問題は二度と出てこないかもしれないが、この考え方はまた使えるから」と動機づけします。

そこで出てきた答えを板書しながら、まとめていき、考え方の手順を整理します。
時間内に終わらなければ次の授業に持ち越します。
ステップによっては解説を省略することもあります。

なお、論理エンジンの内容はテストには入れることもあるが、単独では出さないということです。
特に後半のレベルでは文章が長い割に問われることが一問ということもありますので、総合的な実力把握のできる問題にするということでした。

【成果】
11月に、上位の子には2月にベネッセなどの学力検査を受けますが、3教科では国語が比較的高いということです。

<学び>
今回の学校では、前年度の担当者がシラバスをつくる、という点から学ぶことがあると思います。論理エンジンだけでも、こうした取り組みを始めてみるとよいかもしれませんね。

成果をどう定義し、検証するか

論理エンジンを導入している学校に活用状況を伺いに行きますが、具体的な教育成果や影響について話される先生はそれほど多くありません。

先週伺った中国地方の学校でも、中学2年生までにOS3を終わらせますが、その効果について質問しましても「論理エンジンだけをしているわけではないので」とお答えになります。
教科書は東書、別に記述力をつけるための問題集をしているということでした。

中学2年生の終わりでOS3は結構順調な方だと思いますが、先生の感想としては「簡単だし、文も短いので」と問題は感じておられない様でした。

新版になり冊子がスリム化したことで扱いやすくなったという感想は他校と同じです。なお、誌上講義は中1から中2に上がる春休みの宿題です。

週に一コマ、毎週1レベル進むペースで、基本的に宿題にしていた箇所を授業内で答え合わせしていく、という授業展開です。

確かに教育活動はこちらが意図していない部分も含めて影響がありますし、「こうしたからこうなった」という直線的な関係で捉えてしまう<科学的>な思考に拘泥することは危険な面もあります。
しかし、意図的で、反省(省察)の対象となる教育活動を教育実践と呼ぶならば、教師側としては「こうしたからこうなるだろう(なってほしいなぁ)」という思いを持ち、検証することは必要なのだと思います。

よくよく話を伺っていますと、「基本的な文章の捉え方については役立っている」「例えば、主述の関係や具体・抽象の捉え方の練習になっている」ということでした。

冒頭の「論理エンジンだけをしているわけではない」という言葉は、教育活動をより全体的に(ホリスティック)に捉える教育家としての姿勢だったのかもしれない、と、訪問時の記録的な暑さとともに思い返しています。

「何で」を考える習慣

連続して東大合格者を出した新進気鋭の関東の中高一貫校で論理エンジンの活用状況を伺ってきました。中学3年間は「論理的に文章を読み論理的に考える力の育成」、高校3年間は「言語能力と論理的思考力の育成」と、シラバスに「論理」を一貫して打ち出しています。
中1で5コマ、中2で6コマ、中3で5コマの国語の授業があります。

【ペース】
レベル100まであった旧版のペースで、中1で30まで、中2で50まで、中3で70までというハイペースです。高1で90まで、高2と高3で100までを終了するというペースです。
これは、導入時に中学生だった生徒が、卒業時にレベル70くらいまでしか終わなかったことを反映しています。今高2の4期生が92まで終わっており100に届きそうだということです。そのペースが上記のペースだということです。レベル70以降がいかに高いハードルであったかが分かります。

お話を伺った先生は現在中学2年生を受け持たれています。週6コマ、すべてが論理エンジンの授業で、学期に2つくらい教科書(三省堂)から題材をする、ということです。
しかし、レベル30を超えると苦しくなる生徒も出てくるので、そのフォローを考えているということです。

【授業展開】
中1、中2は最初の10分で漢字テストをして、宿題の答え合わせをします。誌上講義ができたことで宿題を出しやすくなったということです。なお、長期休暇は別の問題集を出すということです。

そして、時間を2分とかで区切り、その場で生徒が解いていきます。先生は机間巡視しながら生徒の出来具合を見て回りますが、答え合わせは生徒の話し合いを中心として進める点が特徴です。

たとえば、全員が「選択肢イ」で一致すれば、別に生徒も説明を欲していませんので、生徒の説明を確認して次に進みます。逆に答えが分かれれば、机間巡視をして見て回った生徒の意見を頭に置きながら、生徒に説明を求めたり、どうしても難しそうなら解説します。
切りの良いところで終わり、時間があまれば自習にしてテキストを各人がします。
レベルがひと段落したところで、教科書や文法の内容を扱って、また論理エンジンをします。

話し合いを中心に授業を進めることで、生徒は楽しそうにやっています。特に、レベルが上がって話し合っても答えがでない場合などは盛り上がります。

【教科としての取り組み】
中学では5人が担当しますが、各学年で2クラスは中学専門の教員、1クラスは高校との掛け持ちという教員配置になっており、高校に持ち上がっても中学とのつながりがあるようにしている。教員は始まる時は必ずOS1から始めるようになっているという点も特徴です。
教科会で話し合うことはないのですが、中学校は校舎が別で、職員室が小さいので、論理エンジンの進め方や生徒から出た質問への対応などの話し合いはすぐにできるし、よくある、ということでした。

【印象に残っている生徒】
東大に合格した生徒は、論理エンジンを導入した先生が担任だったということです。現代文を専門とされる先生で、ディベートや小論文などをよくしていたということです。

【成果】
「何で」を考える習慣がついた生徒が増えてきたということです。「何で選択肢イになるの」と、何となくではなく、こうだからこう、と説明できること自体に喜びを感じる生徒も増えてきたということでした。
中学生で論理エンジンに対するモチベーションが下がる、ということは特に見られない、ということです。その要因として、クラスでの話し合いが活発で、先生からもすぐに答えを言わない、という点が影響しているかも、ということでした。
また、新版になりステップが厳選されたことで、授業でも扱いやすくなったとことです。なんd

内部進学生徒と外部入学生徒の反応の違い

論理エンジンを最初にご紹介した時から導入いただいている関東の中高一貫校で最近の状況についてお伺いしてきました。お話を伺った先生は、この学校で勤めて6年になるということでした。

【ペース】
中1 週3時間+教科書
中2 週2時間
中3 週1時間 ※去年までは2時間

中2から新版を使い始めたのですが、スリム化したことや誌上講義があることで使いやすい。ただし、中2や中3の選抜クラスになるとテキストが足りず、自作の問題で対応する場面もある。

お話を伺った先生はレベル1から順に行っていくようです。また、ステップも全部していく、ということです。
1回の授業で平均2ステップ、という感じです。


【授業展開】
50分授業ですが、中学生ですとテキストをするだけの授業だと飽きてしまう。特に男子。
そこで、最初の10分は「今日は対比について学びます。」と授業の目当てを示し、公式的なことを提示したのちに、日常生活での体験を交えた導入の話をする。

例えば、「みかんの色はオレンジ、だとするとメロンの色はグリーン。ここで、みかんとメロン、オレンジとグリーンはそれぞれ果物と色というカテゴリーで対比されています。」
「今までの世界とこれからの世界、共に世界という視点をずらさず、時間軸だけが対比されています。」などです。

その後、30分ほどテキストの「論理を掴む」を確認したのち、「一緒に解いていく」。

これも、授業が単調になるという経験から判断したことです。
例えば、「まず筆者の主張を見つけちゃおっか」と投げかけて、説明の中で、自分が大学受験の際に使っていたテクニックを交える、とか、「指示語、どうするんだっけ?中1でやったよね。」など、テキストと教師の体験、生徒の既知の内容をつなげる授業展開だそうです。

反応に男女差はあまりない、ということです。

【教科内での研究】
同じ学年で3人の国語の先生がいるということですが、新しい先生はおらず、全員が論理エンジンを使ったことがあるということで、教科会でも論理エンジンのことを話すようです。特に、旧版の分厚いテキストであったときは、これをどのように扱うかが議論されたようです。ただし、授業の進め方は先生によって違うようです。

【成果】
中学生を対象とするベネッセの学力推移調査では、数学や英語は学年で上下しますが、国語は徐々にではありますが安定して上がっている、ということです。偏差値は47から52までになったと言うことです。

【印象に残っている生徒】
国語だけできない、という生徒、「何をやったらいいですか」というレベルの生徒にとっては、解答の手順などが丁寧なので良い。また、授業でやらなかったけど「ここやってごらん」と具体的に力をつけて欲しいポイントのトレーニングを示すことができるのも良い。

【課題】
OS4までは本文も短いため、生徒も「簡単」という気分になる。論理エンジンは、例えば中学校では特に国語を勉強しなかった生徒が、高校でつまづいたときに「こうすればよかったんだ」と気づくとその価値がわかるけれども、中学生からしているとそれが実感しにくい。中学生の教科書だと読めば分かるので、そこまで考えなくても「できてしまう」。実はこういう構造があったんだ、という発見がある程度の文章を扱わないと、論理エンジンの価値がなかなかわからない。

【大学入試編】
高校生にとっては理想的なテキスト。評論のテーマがはっきりしているし、解説も解りやすい。自分ひとりでもできる。要望を言えば、中高一貫生はOSをやっているので、解説に「レベル○○でやったことが生かされている」などの説明をいれてほしい。各問題に、参照すべきOSのレベルが併記されるだけでも良い。そうするとOSとのつながりが見えるので。

伸びた生徒のパターン

先の記事でご紹介したように、論理エンジンをご紹介した当時から採用いただき、今では全校レベルで導入されている別の高校に伺いました。推進者は物静かな先生ですが、しっかりと成果を上げられており、機会があればお話しを伺いたいと思っていた学校でした。

ペースは週4,5時間のうち1単位で3年間、1年生でOSの前半、2年生でOSの後半からPSの真ん中、3年生でPSを仕上げるというもので、先にご紹介した学校の特進コースとほぼ同じペースです。
ステップは基本的に頭から順に始め、夏や冬の長期休暇でまとまった課題を出してペース調整している、ということでした。なお、コースによってはPS4の英語の部分などは必要ないので飛ばす、ということです。

授業展開は予習を基本として、予習したかどうかを冊子提出で確認し、ステップ1から読み合わせ、一緒に解く、ひっかかりやすいパターンの確認、まとめで、ステップのやり残しは次回というオーソドックスなもので、これも先にご紹介した学校と変わらないように見えます。なお、冊子の答えは単元が終わった後まで配らないということでした。

では、何が違うのだろうと思い質問しますと、教科内のやりとりが静かであるがされている点が浮かんできました。
20代2人、30代3人、40代3人という比較的若い教科集団で、「生徒がどこでつまづきやすいか」「今年の学年は主述が弱いのでここを厚く指導しよう」など教えたいところを話し合い確認するということです。教科会は月に一度程度です。先生同士で生徒やクラスのうまく行っているところや進捗状況などを話し合います。

また、学年ごとに組んだスタッフで指導方針を共有したり、1年生の現代文、古文、論理エンジンはなるべく同じ人が指導できるようにするなどラインをそろえているということです。

導入時は2人の先生のみ、特進クラスだけの取り組みでした。自身が特進の担任となり、何か新しいことをしようということで導入したということです。そのクラスが現役で国公立8人と、これまでになかったような成果を出したことで、他の先生も関心を持たれたと言うことです。その時には、自身も一通り論理エンジンを使った指導を経験し、どこでつまづきやすいかなどの見通しも見えてきたので、他の先生にも説明しやすかったと言います。

生徒が伸びるパターンで一番多いのは、「中学まではできると思っている生徒」の話です。中学まではそれっぽい選択肢を選ぶという問題ですが、大学では客観的に読むことが必要となります。しかし、主観的によむことを直すテキストが無かったと言います。論理エンジンを使うことで、こうした中間層の生徒が客観的な読みをできるようになりGMARCHに届くようになるということが伸びた点だと言います。

その推移ですが、まず1年生のときは評論が弱い。論理エンジンをすることで2年の真ん中あたりから評論ができるようになってくる。しかし、ここで自由な読みができなくなり、小説が弱くなる。平行して世界を広げるような読み物をすることで、2年の後半から評論も小説もできるようになる、というのが最近のパターンのようです。

伸びた生徒で印象的だったのは、理系の生徒であまり現代文が得意でなく、論理エンジンをしても中々伸びなかったのですが、突然「パズルみたい」という感覚が生じ、「パズルだったら解ける」と話したことだと言います。この生徒は現役で国立の理系に進みますが、「パズルをはめる感覚」というのは、論理エンジンを用いた指導の成果を測る一つの目安として興味深い言葉です。

最後に、先生自身がどのような生徒であったのかを伺いました。ご自身は予備校には頼らず自宅でコツコツしていたということですが、勉強ポリシーは「わからないところは自分で徹底的に調べる」ということだったそうです。辞書を引き、調べた単語に印をつけ、また同じ単語を調べると「悔しい」と感じる。そうした勉強で辞書を何冊もつぶしたと言います。
高3まで数学を取っていたのですが、国語はもともと好きで、特に古文の先生に影響を受けたとお話されました。文法や内容など、どの説明も生徒の気持ちを引き付ける授業であり、「この人の質問に答えられれば受かる」と感じさせるような先生だったようです。

「声に出して読みたい日本語」の齋藤孝教授は、教育とは「憧れに対する憧れ」と言います。学問の世界や恩師に憧れ学ぶ先生のベクトルに、その先生に憧れる生徒のベクトルが向かうと言う図で説明されています。そんなことを思い出すお話でした。

コースによる反応の違い

論理エンジンをご紹介した当初から採用いただき、ほぼ全生徒がお使いいただいている学校にお話しを伺いに行きました。

教頭先生が、ご自身の専門である理科において、生徒が文章を読む力が弱いということから国語主任の先生などと相談して導入に至ったと言うことです。

文章表現という単位を設定し、特進では1年生はOS4、3年間でPS5まで、総合では1年生はOS2、3年間でOS5までというペースです。使い方は先生に任せています。1週間に1レベルで、授業の中で解説する講義形式だと言います。今年から教科書を明治書院から第一学習社に代え、思考ルートを参考にして授業内でも論理エンジンの考え方を使っていくということでした。

特進はベネッセや河合の現代文の得点が安定してきたことや、生徒からの質問もでてくることなど、生徒が変わっていったという経験をした先生も多いことから推奨されています。

一方、総合コースの生徒は気持ちを持っていくのが難しいということでした。テキストをこなすのに手いっぱいになっているということです。

生徒への動機づけも、「継続する」「信じてやる」という呼びかけで終始し、動機づけや解説の仕方も教員間で交流する機会がもてないこと、他教科との交流が十分にできていないことが課題とされました。

そこで、総合コースの生徒さんにはつぎのようなご提案をしました。
・ステップを厳選すること
・クリアテストを用いたチーム形式のゲームをしてみること
です。
チーム形式のゲームとは、4人のチームになり50分の中でどこまで先のレベルクリアテストまで進めるかを競うものです。ただし、4人全員が合格しないと次のレベルに進めません。合格しなかったチームはテキストをもう一度復習し、教え合い、同じレベルの別のクリアテストに臨みます。再チャレンジしても合格できない場合は、次のレベルに進みます。

上記は、
・先生から「ここまででいいと言われているが、全部しないと気持ち悪い、もったいない」という気持ち
・クリアテストで合格できずに悔しいという気持ち
・クラスメイトに説明してわかってもらってうれしいという気持ち
へアプローチするもので、「生徒が教員の設定したハードルを自ら越えていく」というクラスの雰囲気を作ることを目的としたものです。

次回お会いした際には、総合コースの生徒さんがどのように変わったかも伺いたいところです。

文章を見て教えようとしてしまう

論理エンジンをもう10年近く使っていただいている学校様に、最近の様子を伺ってきました。

近年は、少し扱い方を変え始めたということです。国語教師の性で、文章をみると教えようとしてしまうのですが、それをするととてもあの分量は終わらない。なので、身につけておきたいポイントを明確にする、という点を意識するということです。

職業科をメインとするため、3年生では表現や小論文に時間を割くことが多くなり、読みから離れます。そこで、OS4や5の題材を資料として、問題意識を深め、表現するという活用を計画されています。

論理エンジンは、どうしても文法中心というイメージが生徒にあるので、教科書を使った「読む」という行為も必要という考えです。
「読む」とは、言葉と取っ組み合いながら、相手を理解する活動だとおっしゃいます。
論理エンジンは規則を学ぶのに適した素材ですが、文章のもつリズムを掴む機会も必要だという考えです。
また、授業の中でも、まず自分なりの言葉で言い換えをするなど、言葉を使う経験の少ない生徒の実態を踏まえた構成にしている、ということです。

こうした視点から、教科書も選ばれています。新カリキュラムになり大きな変更があると予想されていたのですが、それほど大きな変化はなかったそうです。特に、推奨されている言語活動例はあまり力が入っていない。その中で、大修館はコラムともリンクさせながら、表現活動がうまくできそうだと考え採用されたということです。

これまでの実践を振り返り、新たなことにチームとして取り組むことで、さらに前進されるのだと思います。またお話を伺いに行こうと思います。

じぶん・この不思議な存在

思考ルートの第一学習社版では、鷲田清一「じぶん・この不思議な存在」も収録されています。

「自己と他者」の講義中、ボーイフレンドと別れた女子学生の回答になぜ最高点を付けたのか、という面白い出だしから始まる本は、「自分」というアイデンティティを探り始める中高生にとっておもしろく読めるのではないかと思います。

また、阪神淡路大震災の時のボランティアを題材に、「ポジティヴな受け身」の意義についても述べられています。「何かをしてあげる」という行為は、その背景に「してあげる人―してもらう人」という関係を構築します。そこに、<ボランティア>の持つ暴力性も見え隠れします。
「ただ、その場にいること」「他者にとっての他者であることを引き受けること」、その意味はエピローグで書かれているように「問題なのは常に具体的な「だれか」としての他者、つまりわたしの他者であり、したがって<わたしはだれ?>という問いに一般的な解は存在しない」と説明されます。
あの日を目前に控えた今、改めて考えてみたいテーマです。

ちなみに、鷲田先生は大阪大学の総長を務められましたが、関西では相手のことを「じぶん」と呼びます。言語的に自分と他者の境界を逆転させる文化の歴史的背景を探るのも面白いかもしれませんね。

http://www.amazon.co.jp/じぶん・この不思議な存在-講談社現代新書「ジュネス」-鷲田-清一/dp/4061493159/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1362537999&sr=8-1

知的創造のヒント

思考ルートの第一学習社版に収録されている外山滋比古「知的創造のヒント」

英文学を専門にされているのですが、その凄さは「自然体」であるところなのだと思います。自身の体験と思考を編み込んだ深い理解、それを状況に応じて柔らかに表現する。
先の記事で翻訳を扱った東大の国語問題について書きましたが、思考と表現を鍛えた先にあるのは、剣や武道の達人のような、こうした自然体であるのかもしれません。

http://www.amazon.co.jp/知的創造のヒント-ちくま学芸文庫-外山-滋比古/dp/4480091777/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1362450195&sr=8-1

文化としての20世紀

論理エンジンの考えを教科書を使いながら鍛えていく「思考ルート」の東京書籍版で、松浦寿輝「映像文化の変貌」を扱っていたので買い求めたのが「文化としての20世紀」です。

ご承知の通り、これは東京大学公開講座の講義集ですが、どの講義も読んでいてとても面白いです。夏目漱石や哲学、政治、外交、経済、教育、科学、身体論、建築と多様な分野の第一人者がわかりやすくその世界を紹介しています。

高1、高2あたりで読むと、自分の関心のあるテーマが何なのかに気づく生徒や、こんな面白いことを言う人がいるなら東大に行ってみようと動機づけられる生徒がでてくるかもしれません。

次年度の教科書からは外されるようなのですが(なので思考ルートの新版でも扱わなくなりますが)、ぜひ教室や図書館においておきたい一冊です。

東京大学公開講座「文化としての20世紀」
http://www.amazon.co.jp/文化としての20世紀-東京大学公開講座-青山-善充/dp/4130030949/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1360892201&sr=8-1

中高一貫校での取り組み

長野に行ってきました。雪で電車が遅れ1時間待ちとトラブルもありながら、よいお話を伺えました。

この中高一貫の学校ではほぼ10年前から論理エンジンを入れて頂いています。

導入当時は中学校を作ったばかりでまだ中3が居ない状態。そうした中で、生徒はどんどん論理エンジンをやっていくという進め方で中1では数名がレベル60(旧版ではレベル100までありました)やっているという状況でした。
今週は全部論理エンジン、というまとめてやる方式だったようです。中学ではトップレベル模試の偏差値が60を超えたそうです。

導入当時は、高校は授業では使わずに、クリアテストを中心に授業で扱う時間をとり、高1でレベル30、高2の特進でレベル40という進度でした。
評論などで「この解き方は論理エンジンでやったところだよ」と指摘できる点が良いと言う評価でした。
1月下旬の模試では、英語、数学に比べ国語、特に、現代文、評論に効果があるのかも、という評価でした。偏差値でいうと55から60、10挙がっている生徒もあるということでした。
理系志望の高2の女の子は「国語が見えた」と先生に行ったそうです。(旧版のレベルで60から80、河合のマークで88、現代文は満点) クリアテストで誤答傾向を見るという扱い方でした。

当時の保護者の中には「自分が見つけた教材なのに、学校でみんなが知るようになってくやしい」とか、「存じ上げています。出口先生のものですよね。」「東京の有名進学塾でも使っていますね。」という方もいらっしゃったようです。

さて、それからどうなったのでしょうか。

まず、進学実績を見ますと、過去3年間で東大を5名だしておられます。中高一貫の3期生2名が現役合格ということです。国公立は3年間で212人、1年に70名が国公立に行くとして約20%が国公立に行っているという状況でした。

ホームページ上のカリキュラムでは、中1で文章に親しむ、中2で表現する力を養う、中3から高1にかけて読む力を養う、高2で応用力を養い、高3で総合力を高めるとあります。中学では通常クラス、高1で習熟度になるということです。こうした取組で、センターの4000字、原稿用紙10枚程度の評論を把握できる力を養っているということでした。

中1から持ち上がり、今年高3を受け持たれている先生のお話です。
まず、中1では週6コマが国語です。公立では4コマ程度だそうですね。十分な時間がありますので、作品を読むだけでなく、調べたり、まとめたり、発表したり、ディベートをしたり、短歌を味わったりといろいろな活動ができるということです。こうした活動の基礎を支えているのが、「ことばのつながり」を意識して、その意味を捉える論理エンジンだと言います。
なお、中学までは語彙力が大事ということで、漢検なども有効だと言います。加えて、中学時代に近代のものを読み切る体験をすることが大事だということで、学年ごとの課題図書を設定されているそうです。

論理エンジン(新版)の進度でいいますと、中学3年間でOS3まで、1年に1冊というペースで扱い、高1でOS4、高2でOS5ということです。ただし、高校から入ってきた生徒は、高1でOS1,2、高2でOS3,4、高3の1学期にOS5という進度です。なお、教科書は桐原、大修館、高2高3は第一学習社ということです。
使い方は先生に任されており、教科書の単元が終わったタイミングで集中して使う先生や、教科書の週・論理エンジンの週と週ごとに扱う先生、授業中に少し時間をとってコツコツする先生と様々です。ただし、なかなか時間をとれないという状況もあると言うことです。

新しくでた論理エンジン「大学入試必須編」にも関心を寄せられていました。

もともとは、教員が論理エンジン的な考え方で授業ができるようになることが導入の目的だったということです。守破離の段階でいうと、今はどこにあるのか、また聞いてみたいところです。

思考ルートと論理エンジン

今日は論理エンジンを長く使っていただいている学校様に、「思考ルート」のご説明に伺いました。

論理エンジンを数年使っている先生は教科書とのリンクができるようになるけれども、先生間でのズレがあったり、新しくその学年を受け持つ先生や、新しく学校に来た先生は論理エンジンという教材を消化することからまず必要になる、という課題があるということでした。

高2から受験指導に入る土台づくりとして、共通の指導言語やツールを使っていこうと取り組みを始められています。
「思考ルート」のテキストや、付随する教師用DVDが、教師側の研修ツールとして有効だろうということで、早速ご注文をいただきました。まず、春休みにテキストやDVDを用いた研修を行い、学期中、夏休みに振り返りの時間を持とう、ということでした。

これからがますます楽しみです。

「思考ルート」開発者 開智高等学校(埼玉)加藤先生のインタビュー
http://www.ronri.jp/contents/takumi/vol7/index.shtml