○中教審答申のポイント
平成26年12月22日の中教審第96回総会で出た二つの答申がニュースとなりました。一つは、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」、いわゆるセンター試験を廃止した新テストの構想に関わるものです。もう一つは、「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構想について」で、小中一貫教育や飛び入学などの大学入学に関する内容でした。
すでに大手テスト会社や予備校が情報をまとめていますが、答申の具体的な内容については割愛されていますので、当ニュースレターで複数回に分けて、その内容をご紹介できればと思います。そのうえで、これからの教育活動について、論理エンジンをどのように活用していくことができ るのか、ということをみなさんと考えていければと思います。
具体的な内容については、次回のニュースレターで触れることとして、論理エンジンの観点からは、答申の文章に少しひっかかりました。特に、「新しい時代にふさわしい~」(資料1-2)の資料の「はじめに」の文章の途切れ感や、「そうした変化の中で、これまでと同じ教育を続けているだけでは、これからの時代に通用する力を子どもたちに育むことはできない」の「に」の使い方はこれでよいのか、という点です。みなさんの目からも、ぜひ一度確認いただき、意見交換できればと思います。
平成26年12月22日の中教審第96回総会で出た二つの答申がニュースとなりました。一つは、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」、いわゆるセンター試験を廃止した新テストの構想に関わるものです。もう一つは、「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構想について」で、小中一貫教育や飛び入学などの大学入学に関する内容でした。
すでに大手テスト会社や予備校が情報をまとめていますが、答申の具体的な内容については割愛されていますので、当ニュースレターで複数回に分けて、その内容をご紹介できればと思います。そのうえで、これからの教育活動について、論理エンジンをどのように活用していくことができ るのか、ということをみなさんと考えていければと思います。
具体的な内容については、次回のニュースレターで触れることとして、論理エンジンの観点からは、答申の文章に少しひっかかりました。特に、「新しい時代にふさわしい~」(資料1-2)の資料の「はじめに」の文章の途切れ感や、「そうした変化の中で、これまでと同じ教育を続けているだけでは、これからの時代に通用する力を子どもたちに育むことはできない」の「に」の使い方はこれでよいのか、という点です。みなさんの目からも、ぜひ一度確認いただき、意見交換できればと思います。
○中教審答申の問題意識
平成26年12月22日の中教審第96回総会で出た「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」では、大きく「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」が示されました。その問題意識を読み解きますと、次のような考えがあるようです。
・これまでに「確かな学力」(基礎的な知識・技能、これらを活用して課題を解決する思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度)を育むため、言語活動や探求的な学習方法の実践が研究されてきている。
・大学教育でも、学生が主体性を持って多様な人々と協力して問題を発見し、解を見出す能動的学修(学修:身に付ける、学習:繰り返し練習する)の充実に向けた教育改革が図られている(アクティブ・ラーニング)
・しかし、現在の入試制度では、そうした力が評価されない。少子化による大学入試の易化により、自主的な学習をせず、目標をもてないまま、基礎的な知識や技能が不十分なまま大学に入学してくる。こうした学生を大学だけでは教育しきれず、経済界からは不満の声があがる。
・18歳人口が平成33年ごろから減少に転じることを踏まえれば、高大接続の改善により教育改革の気運を高める必要がある。
どこまで現実味があるかは不明ですが、学校としての立ち位置は検討すべきだと思います。次回は、新テストの内容についてご紹介します。文科省のHPの資料1-1(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/1354209.htm)や、河合塾の大学入試情報「大学入試に新テスト導入へ 中教審が答申(14/12/26)」(http://www.keinet.ne.jp/topics/14/20141226.pdf)に分かりやすく表でその内容が示されているので、ご覧ください。
○二つの新テスト
元々、中教審の要求する「アクティブ・ラーニング」は、大学での大教室における講義一辺倒の方法の改善が根底にあります。そこで要求されていることは、実は小学校の教室ではよく見られる方法であったりします。弊社で行っている授業アンケートの結果を見ますと、近年は興味深いことが分かりました。アンケート項目の中に、言語活動の充実に関する項目を入れている学校では、これらの項目が学力向上や授業への関心と高い相関を持っている教科が現れるようになったのです。これは、思考力・判断力・表現力に力を入れてきた学習指導要領の影響が、ある程度小学校で浸透しているためと推察できます。では、中学校や高校の授業形態は、こうした教育を受けてきた生徒たちに合っているのでしょうか?今、中学校での論理エンジンを用いた指導方法についてお話を伺って回っています。ぜひ、先生のお考えもお聞かせください。
さて、中教審では、「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」の二つのテストを示しました。いずれも仮称です。詳細は前号で掲載しましたサイトに詳しく紹介されています。また、「論理エンジン研究会」のブログ(http://ronriengine.blogspot.jp)にも記載いたしますので、またご覧ください。
重要な点は、大学入試において、合教科・科目型、総合型の問題が出題されるようになること、それはまずAO入試から始まるだろうと予測されることです。そこでは、複雑な課題に対して知識や技能を活用して探求的に表現することを求めるパフォーマンス評価や、複雑な課題の達成度を段階的に評価するためのルーブリック、様々な学習過程や成果の記録を蓄積して学習状況を把握するポートフォリオ評価が行われます。つまり、論理エンジンの学習においても、そのプロセスに着目した指導が必要となります。
○今年度での大学入試の動き
では、実際に、中教審の言う「新テスト」に向けた動きはどの程度の影響を及ぼしているのでしょうか。
例えば、上智大学はTEAP利用型入試、ということを始めました。これは、公益財団法人日本英語検定協会の実施するTEAP(アカデミック英語能力判定試験)を受講することで、英語科目を免除するという取り組みです。2月3日(火)に行われたTAEP利用入試の世界史では、史料読解と400字論述の国公立型の問題で、これまでと正反対の出題形式にとまどった受験生もいたかもしれません。加えて、単に世界史の知識を問うだけでなく、現代文の要約ができるかどうかも問われるという、合科型とも解釈できる出題となりました(参考:増田塾 解答速報2015 http://masudajuku.info/answer/)。
東京大学が平成28年度から推薦入試を導入することが報じられましたが、その出願要件としてバカロレアやTOEFL,数学・科学オリンピック、総合的な学習の時間に関連する論文、課外活動やボランティア活動に関連した卓越した探求能力を証明するもの、などが求められています(参考:東京大学 http://www.u-tokyo.ac.jp/stu03/e01_25.html)。東京大学のこうした動きは、いくつかの大学においてもAO入試の比重をより大きくするなどの影響を及ぼすことが考えられます。
下村文部科学大臣が在任する期間は、バカロレアを意識した取り組みも継続されるだろうという見方もあります。バカロレアの描く学習者像は「探求する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念をもつ人」「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」であり、近年よく聞かれるようになった「アクティブラーニング」「協働学習」「ルーブリック評価」も、こうした学習者を育てるための具体的な教育アプローチや評価方法と言えます。各校においても、こうした観点から、自校の教育活動を振り返ってみる必要があるのかもしれません。
○変化を実感している学校
今回の中教審の動きを実感している学校は少なからずあるようです。全私学新聞で大きく扱われた、ということを理由に挙げる学校もありました。中でも、文科省の推進するSSHやSGHに取り組む学校、申請しようとされる学校では、その求める学習者像が、中教審の示す学習者像と重なる部分があると感じているようです。そして、大学側にしてみても、推薦入試やAO入試を拡大することで、そうした取り組みをする学校との連携をしていきたい、という動きがでてくる可能性も考えられます。慶應大学や早稲田大学など、私学の雄を巻き込むことも、こうした動きを進めるための一手だろうと見る声もあります。私立大学の経営も補助金に依存する部分があることから、文科省の動きを全く無視することはできないだろう、ということです。
このような動きを考えた時、難しくなるのは首都圏の中高一貫校ではないか、という大胆な予想をされる方もいらっしゃいました。つまり、センター試験の一点刻みの学力を追い求めて、部活もそこそこに勉強のみで実績を高めてきた学校は、もしこの動きが本格化すれば自分たちの教育活動を見直す必要がでるかもしれないとおっしゃいます。今回の中教審の求める学習者像では、急ごしらえではできない学力が求められます。その材料の仕込みを中学時代からいかに行っていくか。こうした観点で教育活動を見直す必要があるだろうということです。
すでに取り組まれている学校はあります。例えば、開智高校の加藤先生の、「学びあい」をベースとした論理エンジン及び思考ルートの取り組みはその代表でしょう。これからも、こうした実践をされている学校にお伺いして、色々とお話をお聞かせ願えればと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿